米国でもいまだ見られる「紙とペン、ファックス、電話」を使ったビジネス。そんな企業のDXを進めるB to B取引プラットフォーム開発企業・Nuvo

 Nuvoは米国でB to B取引プラットフォームを開発するスタートアップ。同社のロゴが写り、関連する記事と分かるアイキャッチ画像

インターネットの浸透は、B to Bの取引の形をも大きく変えた。大手製造業者は独自のオンライン調達システムを構築するのが一般的で、小規模な事業者も海外の業者、あるいは、AmazonのようなECサイトを利用し材料や製品を入手することもあるだろう。

しかし、海外のECサイトから購入する場合では、そもそも大口の注文には対応していない、あるいは、輸送や通関の面で調達が困難になる場合がある。一方、業者と直接取引ができたとしても、取引前に信用面でのリサーチが必要となり、また反対に自らの信用を得られなければやはり大口の注文は難しくなってしまう。

これは、売り手となる際も、同様の問題が生じ得る。

以上のような障壁を乗り越えるため、B to B取引プラットフォームを開発したのが、米サンフランシスコのスタートアップ、Nuvoだ。

Nuvoのプラットフォームは、その企業の事業をはじめとした概要を知れるだけでなく、与信における申請から与信情報の提供といったプロセスもオンラインで行えるもの。B to C事業を営むなどの読者に説明すると、与信とは顧客ごとに信用度を設定するもので、一般的には与信枠・◯億円といった形で取引できる上限額を設ける。

プラットフォームで与信プロセスを迅速化、負担軽減することにより、企業の利益の保全にもつながる。Nuvoのウェブサイトには、不良債権が発生すれば0.5〜2パーセントの収益損失、クレジットカード決済を利用すれば2.5〜3パーセントの手数料の発生、貿易保険を利用すれば請求額の1〜3パーセントの金額が必要になると説明。これら利益の圧迫を排除し、反対に利益率を高めるのが、Nuvoのプラットフォームの狙いだ。

また、早急な信用承認、適切な与信枠の設定により、顧客の購買量の増加にもつながることをNuvoはアピールする。この点は、売り手にとっても買い手にとっても、大きなメリットとなるだろう。

そして現在、世界各国の悩みの種となっているトランプ関税に対してもNuvoのプラットフォームは一つのソリューションとなり得ると、共同創業者兼CEOのSid Malladi氏は語る。Nuvoを取り上げるTechCrunch(TC)の記事でMalladi氏は、「関税やその他の理由による変化は、価格、リスク、その他のパラメーターの変動に対応する必要のあるあらゆる企業において、取引関係の変化を引き起こす。紙とペンを使ったプロセスに頼っていては、こうした変化に対しスムーズな対応ができない」と語る。

コメントの最後にあった「紙とペン」とは、Nuvoが現在、主要な顧客として想定する業種が、いまだ紙とペン、ファックス、メール、電話を使うケースが多いことを示唆したもの。同社の主要な顧客とは、アルコール飲料関連(ワイン向けブドウの生産農家など)、建築資材(林業者など)、化学薬品、流通、飲食、製造である。

Nuvoは4月30日、シリーズA資金調達ラウンドの完了を発表した。調達額は、4500万ドル(64億円)。前出のTCによると、このうち3400万ドル(48億円)を出資したのは米国の著名ベンチャーキャピタル(VC)であるSequoia CapitalとSpark Capitalであるという。

資金により、前述した主要な業種へのリーチを強化する他、新たな業種への進出にも利用する。

今のところ、Nuvoの顧客は米国が中心であると見られ、同社の拠点も米国内のみに存在する。しかし、利用企業が増えていけば、必然的に海外企業への対応も求められるだろう。また、競争力を持ったライバルの登場も当然、考えられる。