Z世代の旅行、男性は「一人旅」、女性は「食事がテーマ」――3月、JTB総合研究所がそんな調査結果を発表した。同社が18〜29歳のZ世代に「好きな旅行スタイル」について聞いたところ、男女それぞれで最も多かった回答だ。
旅をしたくても、若い世代は使えるお金が限られている。そのため、できるだけ安い交通手段や宿を利用する人がいれば、安価なネット予約の中でもさらなる比較をしているケースもあるだろう。また、航空会社のマイレージもそうした旅での「お得」を実現する方法の一つだ。
日本の場合、クレジットカード会社が学生向けのクレジットカードを提供し、その中で貯めたポイントを航空会社のマイルと交換できる。もっとも、スペックの低いクレジットカードは、1ポイントにつき交換できるマイルが少ない(0.5マイルなど)ことも珍しくない。
同じくZ世代の米国人、Max Morganroth氏はハーバード大学3年時、クレジットカードの入会特典などを駆使してビジネスクラス、ファーストクラスを利用しながら、30カ国を旅した。同級生たちは同氏に方法を聞いてくるが、その多くは特典の付いたクレジットカードを保有していない、クレジットカードを利用して特典を獲得できる行動が時間的に難しい、などといった人たちだった。また学生に限らなくとも、米国人全体を見ると3億人超の人口のうち7000万人は相応の特典のあるカードを持てるだけのクレジットヒストリー(信用履歴)はない。
こうした人々がマイルを貯め快適な旅行できることを目指すため、Morganroth氏が立ち上げたのがフィンテック企業のRove Cardだ。
以上のストーリーは、Roveについて取り上げたTechCrunch(TC)の記事によるもの。さらに続きを見てみたい。
Morganroth氏は旅をする中で、クレジットカードを持っていなくても買い物でマイルを貯められる方法を発見した。Cathay Pacific Airwaysのマイレージプログラム「Asia Miles」だ。アカウントを開設すれば、日常の買い物でもAsia Milesは貯められる。
TCのインタビューでMorganroth氏は、「(Cathay Pacificの地元である)香港では第二通貨のように扱われている」「不動産を一部現金、一部マイルで売ることもできる」と語る。
これに近い仕組みを米国でも築くべく、Morganroth氏は2023年にRoveを設立。翌2024年には著名アクセラレーターのY Combinator(YC)の冬季バッチ(バッチとはスタートアップの育成プログラムで、経営などについて学べる他、YCからの初期投資も受けられる)に選ばれた。
Roveがクレジットカードを使わなくても多くのマイルを獲得できる源泉となるのは、アフィリエイトだ。
Google Chromeの拡張機能「Rove」を開発し、これはショッピングにおける機能となる。Roveを通して取引が成立すれば、企業としてのRoveは収益を得、これをより多くのマイル交換に結びつけるための原資とする。
とりわけ、Roveでホテルの予約をすると、多くのマイルを獲得できるチャンスとなる。ホテルは、予約に至ったプラットフォームなどへ支払われる手数料率が高いためだ。返金できない1000ドルの予約であれば、米欧間の往復航空券と同等価値のマイルが得られるケースがあるという。
Roveが提携する航空会社は11社。しかし、航空会社間の提携により(アライアンスも含まれると見られる)実際には獲得したマイルを全航空会社の9割にあたる企業で使える。Roveのウェブサイトには、利用可能な航空会社の一覧で日本航空のロゴも見える。
Morganroth氏はTCに「Z世代は他のどの世代よりも旅行に熱心だが、旅行を安くしてくれるツールへのアクセスが最も限られている」と語り、Roveがそのソリューションになれると主張する。
このチャレンジが成功するか否かは、米国民、そしてZ世代がRoveをいかに受け止めるか、そこにかかっているといえるだろう。