米調査会社のGallupは2021年、キリスト教の教会、シナゴーグ、モスクといった礼拝所での米国人の加入率が5割を下回ったという調査結果を発表した。礼拝所側にとっては、加入率の低下により献金、寄付が減少するおそれがあり、最悪の場合は閉鎖を余儀なくされる可能性が生じる。
こうした伝統宗教にとって厳しい環境下で、キリスト教教会の収益確保を支援するスタートアップが、米テキサス州ヒューストンのChurchSpaceだ。
ChurchSpaceの事業を端的にいえば、教会の場所をユーザーに貸し出し、収入を得ること。同社は、教会側のメリットとして、以下を挙げる。
- スペースの無料掲載:ChurchSpaceはユーザーが支払う利用料金の一部を手数料として受け取りマネタイズしていると見られる
- 契約の手間がかからない:「ボタンをクリックするだけで、ゲストとシームレスにつながる」「ゲストには道順やWi-Fiなどの詳細情報を提供」と説明しており、Airbnbのビジネスモデルを教会に当てはめたような形となっている
- ファーストタイムビジターの増加:初めての訪問者が増え、教会の認知度も増す
教会の建物というと、天井の高い礼拝堂を思い浮かべ、その利用を想像する。実際、結婚式や音楽ライブでの利用があるようだが、他にもオフィス・会議室として、ポップアップストアとして利用する方法もある。また、教会によっては簡単な体育館があり、そこでバスケットボールなどもできるようだ。
ChurchSpaceは、以上のようなさまざまなスペースをウェブ上で紹介し、例えば240人を収容可能な礼拝堂の利用料金は1時間・150ドル(2万2000円。予約は最低2時間から)、重厚な椅子を備えた10人の利用が可能な会議室は1時間・60ドル(8700円)となっている。
5日には、120万ドル(1億7000万円)の資金調達が完了したことを発表。この調達は、ベンチャーキャピタル(VC)のBlack Ops Venturesが主導した。
資金調達とともに、本社をヒューストンからミシガン州デトロイトへ移転すること、デトロイト市とパートナーシップを締結し市内の教会を対象にパイロットプログラムを実施することも、併せて発表した。
ChurchSpaceのEmmanuel Brown共同創業者兼CEOは「今回の資金調達は、単なるビジネス上の節目ではない。戦略と信仰が融合したときに何が起こるかを証明した」と、Day Edwards共同創業者兼社長は「ヒューストンで私たちが築き上げたのは、単なるテクノロジーではなく、変革だった」「祈りとチームと投資家の支援を得て、同じインパクトをデトロイトにもたらす」とコメントした。
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Day Edwards氏(左)とEmmanuel Brown氏(ChurchSpace発表) |
また、パートナーシップを締結したデトロイト市のMike Duggan市長も、以下のようにコメントしている。
「ChurchSpaceによるデトロイトへの投資が、雇用と革新をもたらすことを歓迎する。私たちの信仰共同体は長年にわたり、地域社会の重要な支柱となってきた」
なお、以前の本社があったテキサス州でChurchSpaceを利用する教会は、年間最大10万ドル(1400万円)の収入を得たとも、調達を発表するプレスリリースで明らかにしている。