9月3週目に発表があった海外スタートアップの資金調達を複数回に分けて取り上げる記事の2回目。16〜17日に明らかとなった5社の資金調達について、説明する。
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元エンジニアの経営者もチェック
WorkFusion|4500万ドルを調達
米国で金融機関向けにコンプライアンス面でのサポートを行うAIエージェントを開発。本人確認やマネーロンダリング対策、リスクのある取引の検知などが行えるソリューションとなっている。AIエージェントには機能ごとに、「Evan」や「Kayla」などといった人名が割り振られていることも特徴的だ。
16日、カナダのプライベートエクイティ(PE)ファンドであるGeorgianが主導する資金調達を実施し、4500万ドル(約66億円)を確保。Nokiaが組成したNokia Growth Partners III, LP、保険会社のChubb INA Holdings、WorkFusionの経営陣なども参加した。
調達した資金の使途は、「エージェント型AIの提供というWorkFusionの注力をさらに強化」すると述べるにとどまっている。
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適法な会計処理のために
Chestnut Carbon|シリーズBで9000万ドルを追加
米国内で植林、森林の管理を行っていることを根拠とした、カーボンクレジットを販売する。Chestnut Carbonが米国内に森をつくるプロジェクトは、37州で展開。顧客には、MicrosoftやJP Morgan Chaseなどが存在する。
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アーカンソー州ジェファーソン郡での植林プロジェクト(Chestnut Carbonプレスリリースより) |
16日、シリーズB資金調達ラウンドで9000万ドル(約133億円)の追加資金を確保。同ラウンドでの調達総額は2億5000万ドル(約369億円)となった。追加資金を投資したのは、カナダ年金制度投資委員会だ。
資金は用地購入と、業務におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)に利用する。
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フィリピンの不動産に投資
Terra Oleo|310万ドルを調達
食品、化粧品で使うパーム油やココアバターの代替品を、農業廃棄物を原料に生産するシンガポール企業。2023年、Shen Ming Lee CEO、Boon Uranukul CTO、Min Hao Wong氏により設立した。
このうち、Lee氏の実家はパーム油の生産を行っている。そのため、「正直にいうと、私は家族の仕事を少しばかり恥ずかしく思いながら育った」と、Lee氏はTechCrunchの取材(※6)に答えている。
なぜかというと、パーム油業界はさまざまな社会的問題を抱えているからだ。代表的なのが、農園を造成するために天然の森林を伐採している問題で、これは気候変動に影響するため、結果的にパーム油業界そのものも打撃を受けてしまう。
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材料が定期的に届く家電と食のサブスク
実際、2024年は平年よりパーム油の在庫が26パーセント減少した。これは、気候変動の他、問題を解決するための規制強化も影響していると、Terra Oleoは解説する。
同社が生産するパーム油やココアバターの代替品は、農業廃棄物を発酵させ、機械的脂質成分を抽出したもの。次の写真が、プロダクトである。
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(Terra Oleoプレスリリースより) |
17日、310万ドル(約4億6000万円)の資金調達とステルス状態からの脱却を発表した。ステルス状態とは、技術保全などのため創業したことを秘匿とする起業の方法である。
Breakthrough Energy's 2025 Fellows Programというスタートアップ支援プログラムに採択されたことも併せて発表し、この支援は事業スケールをラボからパイロットへ拡大するとしている。よって、調達した資金も同様の用途になると考えられる。
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これから創業の人はチェック
Splash Financial|シリーズCで7000万ドル以上
AIを活用し、地方銀行や信用組合といった比較的、小規模な金融機関と、消費者とを結び付ける融資マーケットプレイスを構築。金融機関側には融資による収益化が図れ、消費者にとってはより良い金利で借り換えられるメリットを生む。米国企業である。
17日、シリーズC資金調達ラウンドで7000万ドル(約103億円)以上を確保。Tom Golisano氏のファミリーオフィス(富裕層が資産管理のため設ける会社)であるGrand Oaks Capitalが主導、米カリフォルニア州の信用組合であるFirst Tech Federal Credit Union、信用組合のためのフィンテックソリューションを開発するCurql Collectiveなどが参加した。
資金の使途について、「成長を加速させ、地域密着型の信用組合や銀行から競争力のある金利を求める消費者にとって、最高の選択肢としての地位を強化する」と述べるにとどめた。
Omnea|シリーズBで5000万ドル
企業がプロダクトやサービスの調達を行うためのAIプラットフォームを開発する英国企業。調達を行いたい企業のメンバーは、自然言語で要望をチャットに入力すると、それに沿ったものを提案してくれる。Omneaは、製品などの入手までにかかる期間の短縮、経費削減の効果があるとしている。
17日、シリーズB資金調達ラウンドで5000万ドル(約73億円)を確保。ベンチャーキャピタル(VC)のInsight PartnersとKhosla Venturesが主導、他、同じくVCのAccelなどが参加した。AIを活用したサプライヤーリレーションシップマネジメント(AI SRM)機能の拡大と人材確保に資金を利用する。
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参考文献
※1:WorkFusion
※2:Chestnut Carbon
※3:Chestnut Carbon Raises an Additional $90 Million for Series B(Chestnut Carbonのプレスリリース)
※4:Terra Oleo
※5:Terra Oleo Emerges from Stealth with US$3.1M in Funding and Breakthrough Energy Fellow Selection to Reinvent Fats and Oils(Terra Oleoのプレスリリース)
※6:Terra Oleo’s oil-producing microbes could replace destructive palm oil plantations(TC)
※7:Splash Financial Raises More Than $70 Million in Series C Round(Splash Financialのプレスリリース)
※8:Omnea
※9:Omnea raises $50m to make procurement every CFO's competitive advantage(Omneaのプレスリリース)