ドローンで人工降雨を行うRainmaker Technologyと米国のパイロット組合が対立。「雲の種」の安全性を巡る両社の主張は

米Rainmaker Technologyと同国のパイロット組合が、安全性をめぐり対立。水滴の付いた葉が写り、人工降雨を行うRainmakerの記事と分かるアイキャッチ画像

スキーやスノーボードをする読者は、スキー場で人工降雪機を目にしたことがあるのではないか。こうした人工降雪や人工降雨は、英語でクラウドシーディングと呼ばれる。

米国のRainmaker Technologyは、ドローンを用いたクラウドシーディングにより農業の支援、干ばつの予防、生態系の保全を目指すスタートアップだ。米連邦航空局(FAA)に、小型ドローンの危険物輸送禁止の適用除外を求めているが、米国のパイロットの労働組合である航空パイロット協会(ALPA)は安全性が証明できない限りこれを拒否すべきと主張していると、同国のメディアであるTechCrunch(TC)が伝えた。

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まず、Rainmakerがどのような計画を立てているか、確認したい。ドローンや航空機によって「雲の種」であるヨウ化銀を空中に散布する。雲の種は、空中で凝縮、凍結した末、水や氷の結晶が大きく成長していき、降雨につながる流れだ。

雲の種を空中に撒く際、Rainmakerは単純に散布するバーンインプレイス方式と物理的な力を加えつつ散布する射出方式の2方式の「フレア」を実施。ALPAは、このフレアにおける薬莢の軌道モデルや化学物質の環境への影響が明らかでないと指摘する。そして、ドローンで雲の種を運搬することにおける安全性を確保できなければ、FAAはRainmakerの請願を拒否すべきだとしている。

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一方、RainmakerのAugustus Doricko CEOはTCのメール取材に、FAAに提出した請願書は非公開文書だがALPAの指摘は公開情報のみに基づいている、その請願書には航空当局と事前に決めた空域および15000フィート(約4600メートル)以下の高度で飛行するため高高度飛行や空域調整に関する懸念は払拭できる、と反論しているという。

さらに、同社の航空規制担当マネージャーであるSam Kim氏も、「ALPAとの関係を強化していきたい」と前置きしつつ、Doricko CEOが述べるように飛行できる環境が制限されているため、ALPAが「なぜこの免除を申請したのか理解していないことを示している」と主張した。

加えてDoricko CEOは、Rainmakerが降雨のために使うヨウ化銀の量は50〜100グラムだが、民間航空機は1時間、飛行するだけで数キログラムの未燃焼揮発性有機化合物、硫黄酸化物、すすを排出しているとも、コメントしている。

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たしかに、最後の指摘は航空業界内でも課題となっていることであり、とりわけGeneral ElectricやRolls-Royceなどといったエンジンメーカーが有害物質排出の低減に取り組む。

RainmakerもALPAも、それぞれの利害や環境への考え方の違いがあるために、今回の対立を生み出しているといえそうだ。一方、FAAはそれらに惑わされることなく、安全性や環境リスクの科学的な検証を行うことが求められる。

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