6月に資金調達を行った2つのAIリーガルテック、英Definelyと米Crosby

AIリーガルテックのDefinelyとCrosbyを取り上げる。法律を象徴する天秤とセクション記号が写り、AIリーガルテックについて取り上げる記事と分かるアイキャッチ画像

6月、英米のリーガル(法律)テック組織が、資金調達を行った。英国のDefinely、米国のCrosbyで、いずれもAIを活用しつつ契約書に関するソリューションを開発している。

この記事では、Definely、Crosbyを取り上げる。

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Definelyが調達した資金は米国での事業拡大に活用

Definelyは、ナイジェリア出身で英国に移住した弁護士のNnamdi Emelifeonwu CEOと、同じく英国の弁護士であるFeargus MacDaeid最高戦略責任者(CSO)の2人が、2017年、ロンドンで設立。両名とも、大手法律事務所のFreshfieldsに勤務していた。

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MacDaeid氏は視覚障がいを有することから、Emelifeonwu氏が「どうすれば仕事が楽になるか」と聞いたところ、「複雑な契約書の定義を文脈を見失うことなく理解できるようにしてほしい」との答えが返ってきた。

これは、すべての弁護士にとって課題であり、そソリューションになり得ると気付いた2人が、Definelyを創業したという経緯である。

実際に開発したソリューション「The Definely Suite」は、AIを使いつつ契約書の作成ができるもの。作成の段階によって5つのソフトウエアが内包されており、「Vault」は契約書のどこに先例条項や情報を入れるか位置決めするもの、「Draft」は文字通り下書き、AIアシスタントの「Definely Enhance」、校正を行う「Definely Proof」の4つはWordで出力される。完成すればPDFでの出力ができるが、The Definely SuiteでつくられるPDFの契約書は、単語をクリックするとその契約書における意味の確認が可能だ。

9日、シリーズB資金調達ラウンドで3000万ドル(43億円)の確保を発表。フランスの投資会社であるRevaiaが主導し、リーガルテック大手のClioなどが参加した。資金は、Definelyの売上の30パーセントを占める米国での事業拡大に利用する。

Emelifeonwu CEOは、次のようにコメントしている。

「今回の資金調達は、素晴らしいチームの努力と、お客様からの信頼の証だ。

私たちは、人間中心のプロダクト開発に深くコミットしており、生成AIをAIそのものとしてではなく、今日の弁護士が直面する現実的で具体的な課題の解決に役立てている。私自身、元弁護士として、こうした課題のいくつかを目の当たりにしてきた」

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「法律事務所」の形でAIを導入するCrosby

一方、米国のCrosbyは、弁護士向けのAIの開発を行うが、法律事務所の形態を採るのが特徴だ。顧客が依頼した契約書のレビューを、AIと人間の弁護士がともに確認。1時間以内に顧客へ返答する。

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Crosbyは、2024年に設立。6月の資金調達まで、いわゆる「ステルス状態」にあった。ステルス状態とは、スタートアップが技術を守るためなどの理由から、存在を秘匿とすることである。共同創業者は、弁護士のRyan Daniels CEOと、フィンテック企業のRampの創業メンバーだったJohn Sarihan CTOの2人。現在、19人のメンバーを抱える。

Daniels氏がスタートアップの顧問弁護士を務める中で、業務の大半が契約関連に割かれていたことが、起業のきっかけ。法律事務所という形態を採るのは、「プロセス全体を最初から最後まで管理するため、独自の法律事務所を設立する方がよい」という判断からだ。

Crosbyのシード資金調達ラウンドは、17日に完了。580万ドル(8億円)を確保した。著名VCのSequoia Capitalが主導した。

Definelyと比べるとCorsbyは非常に若い企業ということもあり、公になっていないことやポテンシャルが未知数であるとも感じられる。しかし、法律事務所として課題を解決していくという方法は、たしかにユニークだ。

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参考文献:
Definely
Legal tech platform Definely raises $30M Series B to make contract reviewing more efficient(TechCrunch)
Crosby
Sequoia-backed Crosby launches a new kind of AI-powered law firm(TechCrunch)