米CBP、企業にデジタルフォレンジックツールの情報提供を要請。入国者のパソコン・携帯電話などへの検査拡大が目的か

米税関・国境警備局が企業にデジタルフォレンジックツールの情報提供を要請。入国管理官の手とパスポートを持つ人の手が写り、国境警備、デジタルフォレンジックに関する記事と分かるアイキャッチ画像

米税関・国境警備局(CBP)が、企業にデジタルフォレンジックツールの情報提供を要請している。3日、WIREDが報道した。

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フォレンジックとは法科学の意で、デジタルフォレンジックはデバイスやデジタルの記録などから証拠を収集、解析する技術のこと。CBPは、パソコンや携帯電話などから、テキスト、画像、動画といったデータを分析する技術を求めているという。

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現行のCBPのデジタルフォレンジックは、Cellebriteと契約。Cellebriteは、イスラエルを本拠とするデジタルフォレンジックの専門企業だ。2008年より契約しており、直近の契約は期間が2025年7月〜翌2026年4月、総額は130万ドル(1億9000万円)超となっている。

本件を報じたWIREDは、契約リストにCellebriteのUniversal Forensic Extraction Device 4PCというプロダクトにCBPが支出していることの記載がある、としている。このプロダクトは、パソコンにあるデータ分析のためのソフトウエアだという。

今回のCBPの要請は、デジタルフォレンジックをさらに拡大していく意図によるものと見られる。一方、検閲的な行動や恣意的な当局の判断につながるおそれもある。

WIREDはその例として、2024年3月にレバノン人のブラウン大学(ロードアイランド州)医学部教授の携帯電話を米当局が検査したことを挙げる。検査したデータに、イスラエル軍の空爆によって死亡したヒズボラ幹部のHassan Nasrallahに対して「同情的」なものがあったとして、教授はレバノンへ強制送還となった。

CBPは、国境警備の際に令状なしで個人の携帯電話を検査する権限を有する。拒否すると、外国人の場合は入国拒否となる場合がある。

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大前提として、個人の思想や言論などの自由は、広く認められる必要がある。一方で、テロリストは相手の意表を突くタイミングで攻撃を仕掛ける。それを防ぐとなれば、ある程度の検査も必要となる。

自由と安全、どちらをより重く見るか。不確実性の高い現代において、米国に限らず、各国国民が考えなければならない問題となりそうだ。