米国で、コンピューターサイエンスを学んだ新卒者が、就職先が見つからず苦労しているという話を聞いたことのある読者もいるのではないだろうか。AIによって、新卒、若手がこなすようなレベルの仕事は代替されてしまっていることが、要因とされている。
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第二新卒、若手のためのエージェント
イスラエルの戦略コンサルタントであるItay Sagie氏は、米国の企業データベース、Crunchbaseのオウンドメディアに寄稿。現在の、企業が若手人材を雇用しない流れに、疑問を呈している。
Sagie氏の主張を一言でまとめれば、「人材をAIに代替させるのは危険」ということだ。それは、以下の3つの理由からなる。
- 後輩もリーダーもいない
- ジュニアは将来の顧客に近い
- AI自体の潜在能力を完全に失ってしまう
1点目は、若手は成長を重ねた末に、企業のオペレーションをすることになる。そうでない将来を予見すれば、企業は高コストをかけて外部人材を雇わなければならない。しかも、その外部人材はプロパーで育った人材と比べて、ロイヤルティーは低い。
2点目、若手はAIをはじめ現代のムーブメントへの感度が高い。これは、経営層や管理職が持ち合わせていない長所だ。よって、若手を雇用しないということは、企業が顧客や市場の新たな動向を見失うことにつながりかねない。
最後の3点目は、若手がAIを活用しながらたくさんの仕事をこなすことで、さまざまなユースケースを見つけられる。つまり、若手を雇用しないことでAIの価値すら失ってしまうということだ。
そして、Sagie氏は「これは『反AI』の記事ではない」と付け加える。AIは人材の価値をさらに高めるものなので積極的に導入すべきだというのが本意だと、述べる。
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大手企業の現役面接官が運営する就活エージェント【ユメキャリAgent】
以上は、日本の人々・企業へ向けたメディアをつくる立場として、編集部も強く共感する。なぜならば、日本は就職氷河期という時代が生じたことにより、さまざまな禍根を残してしまったからだ。
いわゆる氷河期世代の人々が他の世代より苦しい日々を送っているのはもちろんのこと、企業はヒューマンパワーを失い、また年金保険料をはじめとして該当する世代から受け取れたはずの社会に必要な原資をも失ってしまった。さらに、氷河期世代は団塊ジュニア世代と重なったことから、多くが雇用されていれば今ほど少子化は進行していなかったという言説もある。
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人材採用を検討中の経営層や人事担当者はチェック
このままいけば、米国企業、米国経済はかつての日本と同じ轍を踏んでしまう。また、人口の多い中国も新卒者がマッチする仕事をなかなか見つけられない、就職できないケースが見られ、将来的には今の日本と似たような状況になってしまうかもしれない。
そうした海外の経営者に、日本が陥っている状況を知ってほしいと、強く思う。
一方、今のところ日本の新卒採用は売り手市場が続いている状況だ。しかし近い将来、経営者が海外企業と同じ思考になってしまう可能性は、考え得る。そのときは、あらためて就職氷河期を思い返す必要があるだろう。
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