米国の処方薬業界に参入したMark Cuban Cost Plus Drug Company。Cuban氏が抱く課題感と解決策

Mark Cuban氏がMark Cuban Cost Plus Drug Companyを立ち上げ。同社のロゴが写り、関連する記事と分かるアイキャッチ画像

米国は、欧州や日本ほど公的保険が整備されておらず、民間保険が中心となっていることが知られている。民間保険中心の環境は、消費者が処方薬に支払う価格にも、影響する。

この引き下げを図ろうと、Donald Trump米大統領は8月、製薬大手に薬価引き下げを求めた

一方、民間の側からも薬価を引き下げようと動く人物がいる。NBAのDallas Mavericks元オーナーであり、現在も同チームの株主の1人である実業家、Mark Cuban氏だ。同氏は、Mark Cuban Cost Plus Drug Companyというオンライン薬局を立ち上げた。

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立ち上げた、といっても企業自体は2016年からあるようだ。しかし8月28日、TechCrunchがCost Plus Drugの詳細を伝える記事を配信しており、まだ米国内でもあまり知られていないと見られる。

Cuban氏は同社のサイト内で、米国では鉤虫症(こうちゅうしょう。鉤虫という寄生虫に感染し、発疹や呼吸症状などを引き起こす)に悩む経済的弱者が珍しくない、と指摘。その治療薬であるアルベンダゾールは500ドル(7万4000円)もすることから、手が届きにくいことにも言及している。

しかし、Cost Plus Drugはアルベンダゾールを35ドル(5200円)で販売するという。

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冒頭で取り上げたように、米国は公的保険が広く利用されているわけではない。しかし、薬価の高騰はそれだけでないと、Cuban氏は述べる。

理由の一つは、米政府が薬価の交渉を原則的に行っていないことが挙げられる。前述のTrump氏の要求やメディケアにおける薬価交渉はあるものの、限定的だ。そのため、製薬企業は新薬開発を理由に、消費者にとっては高額に感じられる薬価を設定する。一方で、製薬企業は十分な収益を上げているとの報告もある。

そしてCuban氏は、もう一つの理由も挙げる。PBMの存在だ。PBMとは、Pharmacy Benefit Managementの略で、薬剤の供給管理を行う企業。米国特有のものだが、日本でいえば商社や卸売企業に当たるものといえそうだ。

もちろん、中間にいる企業は自らが受け取る利益率を明らかにしないのは不思議ではないが、Cuban氏はここに破壊の概念を持ち込む。

Cost Plus Drugは受け取る収益を明示。製薬コストに15パーセントを上乗せした分と5ドル(740円)の薬局手数料が、それだとしている。また、消費者が最終的に支払うのは、これらに送料を加えた価格だ。

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一方、Cost Plus Drugはテキサス州ダラスにロボティクスドリブンの工場を建設中。自社生産で、さらなる薬価引き下げも狙う。

こうした試みがうまくいくか、それとも、既存企業の前に敗れてしまうのか。メーカーやPBMがCost Plus Drugの登場を受けてどのような対応をするか、興味深い。

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